日曜サスペンス劇場(32) / 扉の向こう

「日曜サスペンス劇場」シリーズは実際にプレイしたTRPGテーブルトークRPG)の小説化です。
 それを念頭においた上でお読みいただけると、より楽しめるかと存じます。


 本筋
 視線。
 まぎれもなく視線だ。
 自分に注がれている視線にきづいた。
 見られてた?
 しかし、慌てることなく、ボクはふりかえる。
 結城ミサオが戻ってきたのか?
 最悪、彼女を殺さざるをえないかもしれない。
 殺人はしたくない。
 罪の意識が強いからだ。
 窃盗犯にふさわしくない意見かもしれないが。
 第一、怪盗が殺人なんてカッコ悪いじゃない?
「誰? あぁトモカちゃんか……」
 安堵して、軽口をたたく。
「……たまたま扉が開いていて、それで……」
 羽山トモカも応える。
「いやぁ。ミサオちゃんを驚かそうと思って。
 でも、これはやりすぎだよなぁ」
 軽い口調で続ける。
 しかし、目の前の相手を殺す準備も抜かりない。
「ごめん、ごめん。
 このことはミサオちゃんには内緒にしといてくれよ」
 ボクはそういいながらも、扉に、彼女の立っている場所に近づいていく。
「あ。……はい」
 トモカはそう答えつつ、数歩あとずさる。
 ボクはそのスペースを通って、廊下に出た。
 彼女から、ミサオの部屋から十二分に離れてから、そっと息をつく。
 よかった……。
 とりあえず、彼女は目をつむってくれそうだ。
 理由が何かは分からないが、それさえしてくれれば結構だ。
(つづく)

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