日曜サスペンス劇場(31) / 捜索
「日曜サスペンス劇場」シリーズは実際にプレイしたTRPG(テーブルトークRPG)の小説化です。
それを念頭においた上でお読みいただけると、より楽しめるかと存じます。
本筋
カチャ、カチャ。
カチリ。
微かな音をたてて、鍵が外れる。
ピッキングに成功したのだ。
結城ミサオの個室の扉を静かに開ける。
周囲を見回し、誰もいないことを確認。
中に忍びこむ。
扉は後ろ手に閉める。
電気はつけない。
ここで見つかったら侵入窃盗罪になるなぁ。
部屋の中で一息つく。
懐から、ライトペンを出し、周囲を見まわす。
一言でまとめると「実に彼女らしい」部屋だった。
デスク、椅子、クローゼットといった家具は、ボクの部屋と同じだ。
隅にはローラーのついた旅行鞄が置いてある。
捜し物はカードキー。
いったいどこだ?
素人ならそう考えるかもしれない。
だが。
一流の怪盗たるボクは、部屋の微妙な痕跡で、だいたいどこにあるかが分かる。
長年の経験のたまものだ。
さらにプロファイリングも使う。
まず、ミサオは誰かが忍びこんでくることは予想していないだろう。
かといって、大切なカードキーをどこかに出しておくような真似もしないはずだ。
そして、普段の言動から、いくつかに絞っていく。
指紋が残らないように手袋をして、何カ所かを探る。
もちろん、ボクが忍びこんだ痕跡は一切残さない。
……。
…………。
………………。
……。
あった!
カードキーはクローゼットの下の引き出しの中だった。
素早く胸ポケットにしまう。
その時、たまたま廊下を歩く人がいることなど知るよしもなかった。
(つづく)
○星
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