日曜サスペンス劇場(25) / 蒼白
「日曜サスペンス劇場」シリーズは実際にプレイしたTRPGの小説化です。
それを念頭においた上でお読みいただけると、より楽しめるかと存じます。
本筋
一方、倉庫に近づく存在もあった。
それは朝比奈サヤカと沢田ヨゾラのふたりである。
彼らは先輩である福田ヤスオから依頼を受け、
お酒を倉庫から取ってくるつもりだった。
朝食も終え、一服したふたりは「美少年」を持ってくるべく歩いていた。
その途中、ふたりは近づいてくる結城ミサオを目にした。
なぜ……?
ふたりはなぜか違和感をおぼえた。
理由は分からない。
ミサオはふたりに笑顔を向け、
「あら。どうしたの?」
と尋ねてくる。
ふたりは素直に倉庫へ行く理由を答える。
「……そう」
一拍おいてから続ける。
「そういえば、羽山さんがいらっしゃったわよ……」
「あぁ。食事の途中に立っちゃったな……」
「そういえば、どうしたのかしら?」
ヨゾラとサヤカが疑問を口にする。
ミサオは微笑みを浮かべたまま、静かに立ち去った。
なぜ?
再度同じ疑問符が浮かぶ。
今度の疑問の対象は別人であったが。
そして。
倉庫の前にふたりが到着した時、羽山トモカは立っていた。
顔面が蒼白だった。
能面のような表情を浮かべている。
直後、それがきっかけなのか。
ミサオに対して抱いた違和感を思い出していた。
彼女の微笑みに一瞬、しかし確実に「それ」が見えたのだ。
「それ」とは、影であった。
「邪悪」という名の。
(続く)
- 作者: 伊藤通彦
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