日曜サスペンス劇場(16) / 泥酔

 本筋
 沢田ヨゾラは、結城ミサオが会話に入る直前、左腕を揉んでいるのに気づいた。
 肘の少し上、二の腕あたりだ。
 しかし、朝比奈サヤカをかばう、
 あるいは阿佐ヶ谷タクロウをからかう方に気を向けていた。
 その方が楽しかったからだ。


 ふとヨゾラは、あることに気づいた。
 タクロウがやたら自分のスーツの胸のあたりを気にしているのだ。
 さっそくネタにしてからかう。
「先輩〜。どうしたんですかぁ? さっきから胸ばっかり気にしてますよぉ」
「あ、あぁ。これか。いやぁ。携帯が気になって……」
「でも、ここ圏外ですよぉ」
「ああそうだったね……。普段の癖が抜けなくて」
 タクロウは、女性からの連絡がしょっちゅう来ることを言外に匂わせつつ答える。
「キミこそ。館石さんを放っておいていいのかな?」
「え? どうして彼女なんですか?」
「同じ迷彩服仲間じゃないか〜」
 ヨゾラは一瞬沈黙したが答える。
「そんなことないですよ〜。先輩こそどうなんですかぁ?」
「悪いけど。ボクはロリコンじゃないから」
 

 そんなふたりのやりとりを無視して、当の館石ヒナノバドワイザーを飲みつづける。
 ふとイタズラ心を起こしたヨゾラは、空いたバドワイザーの缶に水を入れてヒナノに渡してみる。
 それでも、ヒナノは文句もいわず飲みつづける。
 ついに。
 真っ赤になったヒナノは泥酔して倒れた。
 羽山トモカは、ヒナノを本人の部屋に運ぶことにした。
(つづく)


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