日曜サスペンス劇場(13) / 扉
※少し間が空きましたが、再開です。
本筋
羽山トモカは、結城ミサオの部屋の扉に手をかける。
好奇心のためだ。
反面、扉が開かずに諦めるという状況を期待している気持ちもある。
キィ……。
幸か不幸か、かすかな音を立てて扉が開く。
動かなきゃ……。
意思に反して、目は部屋の中を見つめていた。
誰かいる。
部屋の中にいる人物は、何かを探しているようだ。
ミサオではない。
白い人影が動いている。
誰……?
それは……阿佐ヶ谷タクロウだった。
なぜ?
身体の向きを変えようか迷っていると、タクロウと目があった。
「誰? あぁトモカちゃんか……」
いつもと変わらぬ、軽い声が発せられる。
「……たまたま扉が開いていて、それで……」
言葉を発したのはトモカが先だった。
「いやぁ。ミサオちゃんを驚かそうと思って。
でも、これはやりすぎだよなぁ。
ごめん、ごめん。
このことはミサオちゃんには内緒にしといてくれよ」
タクロウはそういいながら扉に、つまりはトモカの立っている場所に近づく。
「あ。……はい」
トモカはそう答えつつ、数歩あとずさる。
タクロウはそのスペースを通って、廊下に出た。
トモカは、静かに立ちつつ、彼が財布を持っていることをそっと視認していた。
いつか……。
トモカは内心呟く。
タクロウを操りたいと思う時が来るかもしれない。
その時は、きっと今回の事件が役立つ。
信憑性を高めるのに、例えばこういうのだ。
「これは、あの時(今の事件の時に)落とした小銭だよ」
ミサオに対抗する手段を……カードを1枚手に入れた……。
隣人は静かに笑う。
そんな言葉が頭をよぎっていた……。
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