日曜サスペンス劇場(6) / 雨

 その晩も、私は合コンに行った。
「女子大生の最大の楽しみ」といったらいいすぎだろう。
 しかし、「女子大生の娯楽」くらいはいってもいいだろう。
 会話も盛りあがって、楽しかった。
 私の「羽山」という、珍しい苗字もネタに使った。
 雨になったのも気づかなかった。
 いつから降りだしたんだろう?
 雨が酒でほてった顔を冷やす。
 気持ちいい。
 車で来てよかった。
 私は運がいいのだ。
 合コンの会場から小さいグループに分かれていく。
 車の前に到着した時にはひとりだった。
 BMWだ。
 もちろん、私の車ではない。
 農林水産大臣であるパパの車を借りたのだ。
 エンジンをかけ、発車する。
 スピードを上げる。
 繁華街を抜けると、車も人も見えない。
 新聞配達が始まるまでは、まだ間がある。
 もう少しスピードを上げる。
 時速80キロを越したかもしれない。
 交差点にさしかかる。
 信号は黄色の点滅。
 

 その時だった。
 何かが道路にいるのに気づいたのは。
 慌ててブレーキを踏む。
 ABSのランプが灯る。
 キキーーー。
 ガツン。
 ……はねた?
 車の外に出てみる。
 雨の中、ウィンカーががっちゃがっちゃと動いている。
 人だ。
 人をはねてしまった。
 どうしよう?
 ライトから外れているため、若い男性ということしか分からない。
 警察に連絡するか?
 飲酒運転がばれるだけで、免許取消だ。
 犯罪者だ。
 最悪、殺人者として罰せられるかもしれない。
 人生はまだまだ長いのに。
 車の先端を確認する。
 BMWには傷はなかった。
 辺りも見まわす。
 誰もいなかった。
 大丈夫、私は運がいいのだ。
 エンジンをかける。
 かからない。
 落ちついて、羽山。
 自分にいいきかせる。
 再度キーを廻す。
 エンジンがかかる。
 発車させる。
 その瞬間、人影が見えた。
 あれは……。
 結城操だった。
 気づいたのか? 気づかなかったのか?
 

 後日、私が轢いたのが樹だと知った。
 あの日以来、操からの視線を感じる。
 操は私が轢いたということに気づいているのだろうか?
 もしかしたら……と私は考える。
 樹は操をふっている。
 そこから、操が樹に憎しみを抱いたのかもしれない。
 だとしたら、感謝しているかもしれない。
 大丈夫、私は運がいいのだから……。

 私信
 登場人物の中に苗字だけ、名前だけ、両方あるの3種類が混在しています。
 読みづらくてごめんなさい。
 それもこれも、うちが各キャラクターの名前を記載しわすれたのが原因です。
 名前を創作してしまうかどうか考え中です。
 

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