日曜サスペンス劇場(5) / 決意

 樹が死んだ。
 突然の死だった。
 事故だったと後で聞いた。
 俺の親友だったのに。
 ついこないだまで、樹は生きていた。
 もちろん、自殺なんかする奴じゃない。
 自殺するような男が旅行の計画をたてるだろうか?
 何か調べものがあるといっていたが、それが何かは分からない。
 彼の死後、樹の両親に相談してみたが、それらしいものは出てこなかった。
 どこかに紛れてしまったのだろう。
 

 それはともかく。
 新聞の片隅にのる程度の事故だったかもしれない。
 しかし、俺にとっては大きな事件である。
 なぜ彼は死ななければならなかったのか?
 樹に夜中に歩きまわる趣味はない。
 あの日、あんな遅い時間に外にいた理由を俺は知っている。
 操に呼びだされたからだ。
 以前操は樹に告白をした。
 けれども、樹は彼女をふった。
 俺がいうのもなんだが、樹は優しい、いい男だった。
 だから、操が樹に惚れるのは分かる。
 そして、操の方に未練が残っていたのだろう。
 そう。
 あの日、操は樹を呼びだした。
 樹は交通事故にあった晩だ。
 もし、操が樹を呼びださなかったら、事故になどあわなかっただろう。
 もちろん、死ぬこともなかった。
 樹のために何が出来るだろう?
 復讐。
 男同士の友情にかけて。
 それが俺にできる、たったひとつのこと。
 操に対する復讐だ。
 俺は大学を休学して、自衛隊に入隊した。
 1年で全てを学んだ俺は大学に戻った。
 その経験をフルに活かせばできないことはあるまい。
 復讐するのだ。
 正義は我にあり!
 もう少し、もう少し時を待つのだ……。


はてな日記 : 7230 HIT / MIXI :11990 アクセス