第3回、それとも4回だっけ?

2003/11/16 (Sun)

※この話は続きものです(以下略)。
 回数すら忘れているところに愛のなさがうかがえます。

 一体、なぜなのでしょう?
 普通は、家族の人は退院が早いことを喜ぶものですが。
 まず考えられるのは、家族が患者さんのことを嫌っている場合。
 そうかもしれません。
 こんな気持ちで鈴原さんの所には行きたくありません。
 でも、これも仕事。仕方ないです。
 時計を見ました。部屋を廻る時間です。
 笑顔を作ると、ぼくは鈴原さんの部屋に向かいました。

「息子が来たろう」
「……はい」
 ぼくはそう応えるしかありません。
「……そうか」
 鈴原さんはそういって、顔を下に向けました。
 ぼくも、それ以上訊くわけにもいかず、何もいいません。
 沈黙が漂います。
「あの」
「はい」
 鈴原さんが声をかけます。
「『桃栗3年柿8年』ということわざがあるじゃろ?」
「……は?」
 ぼくは絶句しました。
「実は、あの後に『ゆずの大馬鹿18年』と続くんじゃ」
「はい?」
 一体何をいいたいのでしょう?
 しばらくして鈴原さんがいいました。
「すまん。老人のたわごとじゃ。忘れてくれ」
「はい」
 そうはいったものの、こんな奇妙なことをいわれて忘れられるはずがありません。
 ぼくは静に病室を出ました。
 息子さんが奇妙と思ったら、鈴原さん本人の方がもっと奇妙です。
 謎です。
 
※「一ヶ月ぶりです」
 「賭けてもいいけど、前回までの話きっと忘れてるぞ」
 「それは困ったなぁ」
 「大丈夫。誰も読んでないから」