日曜サスペンス劇場(18) / 取引

 少し間が空きましたが、再開です。
 
 現時点での主な登場人物

  ・朝比奈サヤカ(女)
  ・沢田ヨゾラ (男)
  ・羽山トモカ (女)
  ・福田ヤスオ (男)
  ・阿佐ヶ谷タクロウ(男)
  ・館石ヒナノ (女)
  ・結城ミサオ (女)
  ・片倉ナツキ (女)

 本筋
「見ちゃったの……」
 結城ミサオの言葉に、羽山トモカはぞくりとした。
 寒気をおぼえたのは、トモカがクルーザーの外にいるからだけではないだろう。
「な、何を……?」
 精一杯の虚勢を込めて聞きかえす。
「交通事故でイツキが死んだ日。
 そう、あの日は雨が降っていたわ……。
 あの時、あの場所、あなたもいたわよ……ね?」
「……」
 ミサオのアイコンタクトによってラウンジの外に、トモカはここに呼びだされた。
 脛に傷持つ身であるトモカは拒否できない。
 ここでミサオの「宣告」を聞かされていた。
「いいわ。黙っていてあげる」
 その言葉が純粋な親切心でないことは自明だ。
 なぜ……?
「そうね……」
 ラウンジから漏れる光が影を作り、ミサオの表情は見えづらい。
 かろうじて、笑っていることが分かる。
 ネズミをいたぶる猫が浮かべるような笑みを。
「これは取引よ。
 何か困ったことがあったら、お願いするわ……」
 絶対的優位を保ったまま言葉を続ける。
「もちろん。拒否しないわよねぇ?」
 猫なで声を出す。
「え、えぇ。分かったわ……」
 ミサオの『取引』がまともな内容とは思えない。
 とはいえ、トモカにはそう答える選択肢しか残されていなかった。
「そう……。嬉しいわ」
 ミサオは、さらなる笑みを浮かべると、ラウンジへと戻っていった。


 なんだろう?
 このぞっとする感じは?
 トモカは、ひとり一般教養の「心理学」で習ったことを思いだしていた。
「人は、本当にやりたいことを隠して生きている。
 いわば、人は仮面を被って生きているようなものだ。
 この仮面をペルソナと呼ぶ……」
 ほかにも習った……。
「人の性格や言動は、『自分が意識しているか』どうか『他人が知っているか』によって
 4つに分けられる。
『自分が意識して』いて『他人が知らない』部分を、
ジョハリの窓の『隠された窓』という……」
 ペルソナに覆われた『隠された窓』に触れてしまったのか……?
 トモカは混乱する頭で考えていた……。

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